Enscapeで簡単リアルタイム・ビジュアライゼーション(オーク) – 建築ビジュアライゼーションMeetUp第七弾 イベントレポート

2024年4月17日(水)に開催された「建築ビジュアライゼーションMeetUp第七弾」のイベント内のセッション「Enscapeで簡単リアルタイム・ビジュアライゼーション」についてご紹介します。

主催 :株式会社Too
協力 :オートデスク株式会社
     Enscape

協賛 :株式会社三菱地所設計
     株式会社ホロラボ
講師 :株式会社オーク 山内 裕二 氏


講演映像(18分)

セッション概要

Enscapeで簡単リアルタイム・ビジュアライゼーション

新バージョンEnscape4.0を軸に、Revitをベースに使用した簡単綺麗なリアルタイム・ビジュアライゼーション環境をご紹介。

登壇者紹介

講師:株式会社オーク 山内 裕二 氏1
講師:株式会社オーク 山内 裕二 氏

株式会社オークで技術サポートをやっている山内裕二と申します。本日紹介するのは、Chaos社の「Enscape」という商品です。弊社は、V-Rayなどの商品をメインに扱っています。そのV-Rayを作っている弊社とChaos社が統合されて、販売するようになったソフトが、本日紹介するEnscapeです。

Enscapeとは?

Enscapeとは

Enscapeとは、アプリケーションに統合されたGPUでリアルタイムにレンダリングするレンダリングソフトです。主に、オートデスク社のRevitの他、RhinocerosやArchicad、Vectorworks、SketchUpをサポートしています。

デモンストレーション

デモンストレーション

ここからは実際にデモンストレーションを見ていきます。こちらがRevitの操作画面で、Revitで作成したCADデータを表示している状態です。Enscapeは、Revitの中に完全にインテグレートされているプラグインとして使うソフトです。Enscapeをインストールすると上の方にタブが出てきて、このタブからEnscapeの機能に全てにアクセスできます。

デモンストレーション

Enscapeの特徴には、全てEnscape側でアセットデータを提供するという点があります。マテリアルやモデルデータなどをEnscapeが提供しているため、Enscapeが提供しているマテリアルを割り当てていき、ビジュアライゼーションを作っていくというワークフローです。

デモンストレーション

Enscapeマテリアルライブラリを呼び出すと、たくさんのマテリアルがプリセットで提供されています。ユーザーは、これらのマテリアルから自分の建築物に近いマテリアルを選択し、割り当てるだけで質感を表現することができます。

このマテリアルライブラリは、バージョンアップするごとに追加されているため、今後も拡張されていく機能です。画像はRevitに読み込んだ状態ですが、Revitの中でマテリアルを開き、フィルターで新規追加したものをフィルタリングすると、Enscapeから読み込んだマテリアルが反映されます。

デモンストレーション

そうすると、Revitのネイティブマテリアルとして読み込まれるため、Revitのテクスチャ編集で尺度の変更などを全てRevit上で行うことができます。その後、OKするだけで反映できます。こういったワークフローでマテリアルを割り当てるだけで見栄えがいい建築物ができます。

デモンストレーション

では実際にEnscapeを起動していきます。Enscapeは、個別に起動するスタンドアローンのアプリケーションではなくて、あくまでCADの中に入っているプラグインとして動く商品です。そのため、あくまでRevitの中で動いているソフトウェアという位置付けです。

デモンストレーション

画像では、Revitのモデルがリアリスティックに表示されています。リアルタイムでフォトリアルな植物もアニメーションされています。アセットも全てEnscapeに付いてるモデルを配置しただけですが、それだけで画像のようなリッチなビジュアライゼーションができるのがEnscapeの売りのひとつです。なるべくユーザーの方に負担をかけないような設計になっています。

デモンストレーション

昼間の照明は空から来ていますが、ショートカットで時間を動かすことができます。時間を変えるだけで、簡単に昼と夜を自由自在に変えられます。「照明は同じで影だけ動かしたい」という要望にもショートカットが用意されていて、影だけ、いわゆる太陽の位置だけを動かすということもできます。

デモンストレーション

暗い状態でもフィジカルカメラが付いているため、露出を変えて明るさを調整する、画角の調整するということも自由自在です。

ホストのCADに統合されている

デモンストレーション

Enscapeは、ホストのアプリケーション側に統合されています。「ホスト側のカメラと同期」というボタンを押してRevit側のカメラを動かすと、Enscapeのビューをビューポートレンダラーのように使うこともできます。ビューの切り替えをすると、Enscape側にもリアルタイムに反映されます。

Enscapeはプラグインのため、Enscape側に用意されているアセットライブラリのさまざまなモデルを選んで配置するだけです。このライブラリに数が提供されているのもEnscapeの特徴です。

デモンストレーション

配置した後は、変更の適用を押すとモデルが実際に配置されます。右側のEnscapeで左側がRevitの画面で、EnscapeとRevitの両方に反映されている様子が確認できます。これはEnscapeがプラグインとして統合されて動いてるという証です。

そのため、Enscapeバーでモデルを動かすとRevit側にも反映されます。

レンダリングモード

次に、レンダリングモードを紹介します。

デモンストレーション

標準ではフォトリアルなレンダリングですが、「ポリスチレンモード」という表示モードがあります。建築のポリスチレンで作ったモデルを表示するシミュレーションするモードや、太陽光が当たっている部分が赤く表示され、当たっていない部分は青く表示されるヒートマップなどがあります。

デモンストレーション

こういったヒートマップでは、昨今問題になっている温暖化において、できるだけエアコンの使用量を少なくして太陽光で温めるなど、CO2削減のための解析にも使うことができます。ヒートマップで表示されているモードが現バージョンですが、次のバージョンではもっと細かい解析システムが付く予定です。

アニメーションを作る

Enscapeでは、静止画だけでなくアニメーションも作れます。アニメーションの作り方もとても簡単で、単純に自分で見せたい位置にカメラを置いて、キーフレームをプラスします。再度移動して、キーフレームをプラスします。移動して、画角を調整して好みの場所を選び、プラスキーを押すという流れです。

デモンストレーション

画像は、設置したカメラが表示されている様子です。

画角を調整してキーを置いた後は、再生ボタンを押すだけです。このように、Enscapeは、「できる限り複雑にしない。簡単にビジュアルを作りましょう」というコンセプトを掲げています。

360パノラマ画像を作る

Enscapeは、静止画の保存だけではなく360度のパノラマ写真を作ることができます。また、V-Rayのシーンをエクスポートしたり、スタンドアロンの.exeファイルを出力することも可能です。

デモンストレーション

.exeファイルを出力すると実行プログラムができるため、これをクリックします。するとRevit内のEnscapeと全く同じ画面がプログラムで起動して、内部のデータをリアルタイムに見ることができます。この.exeファイルはライセンス不要で動くため、顧客やクライアントに配布して無料で使うことができます。

デモンストレーション

このビューアーはVRもサポートしているため、ヘッドセットがあればVRで見ることもできます。プレゼンなどに活用できる機能となっています。

会場の雰囲気1

Enscape4の新機能

以上が基本的なデモになります。これでEnscapeの使い方を99%は説明したと言えるくらいとても簡単なソフトです。ここからは、今年の3月に出た新バージョン『Enscape4』の変更内容をお知らせします。

デモンストレーション

まずはMac版の提供です。ソースコードレベルでMac版とWindows版が初めて開発されました。次のバージョンからは、Mac版もWindows版も同じタイミングでリリースされるようになります。

デモンストレーション

次にアセットの追加です。Enscapeのアセットはバージョンが上がるごとに追加されるため、今回も人間のモデルがたくさん追加されたり、アニメーションするツリーが追加されてます。

デモンストレーション

次はGIデノイザーです。GIレベルのパスをAIのデノイザーを使ってデノイジングすることができるようになったため、静止画を保存する時にGIを綺麗にして出力できるようになります。

デモンストレーション

新しいVRデバイスサポートです。『Meta Quest3』、『HTC Vive Pro2』もサポートしています。

デモンストレーション

Revitのワークシェアに最適化されているため、Revitを大規模なグループで使われている方は、そういった環境でも問題なくビジュアライゼーションを作ることができます。

デモンストレーション

Vrayブリッジというものについて、3dsMaxやMayaなどにスキップデータを持ち込んで、さらに高度にビジュアライゼーションできるようになっています。

デモンストレーション

以前のバージョンでは、シャドウマップを使ってシャドウを計算していました。しかし、Enscape4からは、『レイトレースシャドウ』をサポートしているため、以前のバージョンと比べるとシャドウの出方が劇的に変わっている様子が確認できます。

デモンストレーション

以前のバージョンでは、レイトレースの時にGPUのメモリー量に関係なくレイトレースで探索されるモデルのポリゴンの量がフィックスで決まっていました。Enscape4からは、VRAMのメモリーに応じてレイトレースで考慮されるポリゴン数が増減するようになっているため、VRAMが多いGPUを使うとレイトレースでも正確な反射を出せます。

Chaos製品ポジション

デモンストレーション

Chaos社はさまざまなアプリケーションを販売しています。『Vantage』というリアルタイムのアプリケーションや、『V-Ray』というフォトリアルなレンダラも開発しています。ここでは、Enscapeの開発の立ち位置について説明します。

あくまでEnscapeは、リアルタイムプレゼンやVR、プリビズの用途です。顧客の前で「壁の色を変えてほしい」、「反射の具合を変えてほしい」、「部屋のサイズをちょっと半分に割ってくれ」などの要望に対して、CAD側で設計を変えながらリアルタイムにプレゼンできるソフトがEnscapeです。

Enscape内蔵のライブラリは速度重視にしているため、できるだけ速度が稼げるように低解像度で作られています。

また、V-Ray Sceneにも出力できるようになったため、Chaos社のより高度なV-RayやVantageを使い、Enscapeから書き出したシーンをVantageに持ち込むことでより高度でフォトリアルにビジュアリゼーションができます。こちらのV-RayやVantage側のアセットモデルですが、Chaos Cosmosは高解像度とハイポリで作られているというコンセプトになっています。つまり、Enscape側のライブラリとは全く違うコンセプトで配布されるということです。

Enscape 価格表

Enscape Tooでの価格表

Enscapeは14日 無償評価版がございますのでぜひお試しください。

https://www.too.com/dc/products/enscape/

会場の雰囲気2

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