【ウェビナーレポート】建設業界におけるBIM/コンピュテーショナル・デザイン活用のいま – コンピュテーショナルデザイン&BIMセミナー

2022年7月1日(金)にオンラインで開催された「コンピュテーショナルデザイン&BIMセミナー」より、セッション1「建設業界におけるBIM/コンピュテーショナル・デザイン活用のいま」のウェビナーの内容をご紹介します。

主催 :株式会社Too
協力 :大成建設株式会社
シンテグレート合同会社
協賛 :オートデスク株式会社
講師 :シンテグレート合同会社 代表 渡辺 健児 氏

シンテグレート合同会社 代表 渡辺 健児 氏

どうぞ、当日の映像もあわせてご覧ください!

【動画】

コンピュテーショナルデザイン&BIMセミナー(全編一括公開)

セッション1:建設業界におけるBIM/コンピュテーショナル・デザイン活用のいま

建設業界におけるBIM/コンピュテーショナル・デザイン活用のいま

シンテグレートについて

シンテグレート合同会社の代表、渡辺健児と申します。まず最初に、簡単な会社紹介から始めていきます。私たちシンテグレートは、テクノロジー・感性・コミュニケーションで建設業界の不可能を可能にするというビジョンのもと、BIMというテクノロジーを中心に建設業をサポートしている会社になります。

上図にある建築は、全て複雑なジオメトリで構成されています。複雑な形状だけが最先端というわけではありませんが、このような建築物の設計・施工は複雑かつ困難な作業が伴います。複雑な建築を実現するためには、最新技術が必要です。私たちシンテグレートはコンピュータテクノロジーを駆使して、このような建築プロジェクトを実現するために日々研究・活動をしています。

シンテグレートは、カナダ出身の建築家フランク・ゲーリー氏が自分の建築物を作るために設立した『ゲーリー・テクノロジーズ』で働いていたアジア人のエンジニアが独立しスタートしました。まず2013年に香港にシンテグレートを立ち上げて、それから2014年に韓国、そして2015年に日本でも法人を立ち上げて現在に至っています。日本のシンテグレートは香港と韓国、日本の3社の中でも一番大きな組織であり、私が代表を務めるビジュアライゼーション専門会社の『vicc』とあわせて、合計23人で構成されています。

シンテグレートの事業には、大きく分けて5つのカテゴリがあります。1つ目は、上図の左側青枠の「BIMのプロジェクト・サポート」です。弊社には海外で経験を積んだコンサルタントがいて、また従業員全員が基本的な英語ができます。そのため、海外のプロジェクトや海外のクライアントが日本でプロジェクトを進める際にBIMのサポートをする体制になっています。

2つ目が、「BIMコンサルティング」です。導入サポート・人材育成・BIM標準の作成などを行っています。そして3つ目が「ソフトウェア・APIの開発」で、4つ目が「ソフトウェア販売・トレーニング」、5つ目が「ビジュアライゼーション(vicc)」です。この5カテゴリをメインとして日々活動しています。

クライアント

次に弊社のクライアントを紹介します。「アトリエ設計事務所」や「組織設計事務所」、「建材メーカー」、「土木設計」、「プレハブメーカー」、「ゼネラルコントラクター」、そして「サブコントラクター」と幅広く、建設業界のほぼ全てのプレーヤーをカバーしています。

私たちが実現したい理想のBIMには、データ連携が必須です。設計で作ったデータを施工や生産設計で無駄なく活用したり、さまざまなシミュレーションの結果をデザインに反映していくことが重要だと考えています。そのためにはフェーズで区切ってサポートするだけでは不十分なため、シンテグレートでは全てのフェーズにおいてサポートしています。

ソフトウェア

ソフトウェアにも取り決めはなく、ケースバイケースで最適なものを使用しています。建設業にも設計だけではなく構造や設備、または多くのシミュレーションを行うさまざまな分野があり、それぞれ使用するソフトウェアも異なります。適さないソフトウェアで作業をしても最適なアウトプットを出すことは難しいため、『Rhinoceros』や『AUTODESK Revit』などを適性を見ながら使い分けています。もちろん、『Tekla』や『Rebro』などのソフトウェアの知識も日々アップデートしながら仕事をしています。

ビジネスエリア

上の図は、シンテグレートが建築プロジェクトのどこをカバーしているのかを表しています。横軸の列はフェーズで、「基本計画」、「コンセプトデザイン」、「基本設計/実施設計」、「入札」、「施工」、そして「FM」という流れです。

左側の緑色の行はステークホルダーです。「施主」、「PM/CM」、「アトリエ系設計事務所」、「ゼネコン」、「サブコン」、「FMサービスプロバイダー」と並んでいます。最初に施主の方から「こういったレベルのBIMでやってほしい」というEIR(Employer Information Requirements)、つまりBIMの要求水準書が出されます。それに対して各フェーズでBIMとデータマネジメントを行いながらモデリングをしていき、さまざまな設計活動をしていきます(*理想の話)。

施工のフェーズでも、同様にBIMとデータマネジメントを行っています。クライアントの項目で前述した通り、シンテグレートでは建築プロジェクトの初期からFMに引き渡すまでの全てのフェーズで、BIMのマネジメントやモデリング、各種シミュレーションを提供する体制が整っています。

建設業界のBIMおよびコンピュテーショナル・デザインの活用について

日本のBIM元年は2009年と言われています。それからさまざまな変遷を経て、今でも問題を抱えながらもBIMの活用は徐々に広がりをみせています。

本題に入る前に少し言葉の説明をします。まず、BIMというのは弊社では「BIMを使った仕事の進め方」や「運用ルール」、「マネージメント」、「プロセス」として捉えています。一方で、コンピュテーショナル・デザインはBIMの中に含まれていて、コンピュータテクノロジーをベースにして、さまざまなツールを使ってデザインやシミュレーションできる個々のソリューションのことだと考えています。

例えば、『Rhinoceros』と『Grasshopper』を使った複雑形状の操作や構造計算、各種シミュレーションをするための要素技術も、コンピュテーショナル・デザインの1つです。つまり、「コンピュテーショナル・デザインの個々のソリューションをBIMという運用ルールに乗せながら、効率的かつクリエーティブに建築の仕事を進めていく」という双方の関係性があると弊社では考えています。

BIMのライフサイクル

上の図は、「BIMのライフサイクル」を表しています。一番上には「プロジェクトのステージ」があり、「プロジェクトの開始」から「設計」、「入札」、「施工」、「運用」と進んでいきます。その下に「シンテグレートのクライアント」、つまりステークホルダーで、「プロジェクトオーナー・プロジェクトマネージャー」から、「設計事務所・エンジニアリング会社」、「ゼネコン」、「ゼネコン&サブコン」、「契約者・FMサービスプロバイダー」とフェーズが進んでいきます。

関連文書については、図の真ん中付近の青色エリア「海外プロジェクト」と、図の下部の黄色エリア「日本のプロジェクト」で分けられていて、それぞれに必要な文書があります。海外プロジェクトの開始時を見ると、最初に「EIR(BIMの要求水準書)」があります。EIRがオーナーから出て、設計事務所は「設計BEP」、次にゼネコンが入札するときには「準備施工BEP」、そして施工の際は「施工BEP」と進んでいきます。このような流れのルールブックを作り、オーナーに承認をもらってルールブックに基づいて作業をしていくのが一般的になっています。

ところが日本のプロジェクトの場合、このEIR(BIMの要求水準書)は残念ながら使われていないケースが多いです。そのため、その後の工程の設計、入札、施工の段階でも、EIRに対してBEPを作っていく流れがありません。基本的にはそれぞれのプレーヤーがやりやすいBIMの活用、コンピュテーショナル・デザインの活用をしているのが現状です。

日本のBIMの状況が変わってきた?

ただし、前述した現在の状況にも変化が表れはじめています。上の図左側にあるのは、2025年の大阪万博のケースですが、万博の委員会からEIR(BIMの要求水準書)が提唱されているのがわかります。図の右側を見ても、国交省がBIMの活用を推奨していることが確認できます。公共事業においても、原則として2023年に小規模を除く全ての公共事業にBIMを適用する方針を打ち出しています。

世界のBIM事情

ここまでは日本のBIMの状況を説明していきましたが、ここからは海外のBIM事情について話をしていきます。上の図は世界のBIMの導入レベルを示していて、「3D」と「BIM」の2項目に分かれています。ここでの3Dはコンピュテーショナル・デザインのことだと考えてください。導入が進んでいる国を濃い青色で表現していますが、上図の通り、「ノルウェー」や「スウェーデン」、「デンマーク」といった北欧諸国が特に濃い青色になっています。その後に「アメリカ」、「カナダ」といった北米が続き、それから「イギリス」、そして「オーストラリア」、「ニュージーランド」と続いています。

アジアでは、シンガポールだけが他の周辺国を差し置いて特に濃い青色で表示されています。日本を見てみると、3Dは4つもマークが付いており、比較的導入が進んでいることが分かります。しかしながら、BIMは1つもマークが付いておらず、まだ導入が進んでいない現状が図からわかります。

AUTODESK製品の特長と活用事例

ここまでは、BIMの概念と日本及び世界のBIMの活用状況について説明しました。ここからは、ソフトウェアにフォーカスしていきます。まず最初は、AUTODESKの製品についての説明です。

上図にあるのは、『Revit』と『Navisworks』、『AUTODESK BIM360』です。Revitは、属性情報を持った3Dモデルとテンプレートを活用して、効率的かつ正確に仕事を進められるソフトウェアです。『Navisworks』と『AUTODESK BIM360』は、モデルを統合して干渉チェックをしながら、クラウド環境でデータマネージメントを行うためのプラットフォームです。

ここで、弊社が実際にAUTODESK製品を使った2016年のプロジェクトを紹介します。上図にあるのはドバイにある『フォルテタワーズ』の事例です。施主から渡されたEIRから設計のBEPを作り、それに基づいて作業したという当時の日本には無い手法で進めました。

こちらは四角い建物の建築であり、形状的には複雑ではありません。しかし反復的なデザインが多かったため、RevitやBIMの利点が最大限に活用されたプロジェクトとも言えます。テンプレートによって多くのモデリングが行われて、干渉チェックやエリアスケジュール、仕上表などを設計に活用しました。

紹介したドバイの案件は6年前のプロジェクトのため、現在とワークフローが変わっています。ここからは、以前のワークフローと最新のワークフローの変化点について説明します。

まず最初に以前のワークフローですが、当時はソフトウェアのデータ連携がうまくできませんでした。RevitデータをIFCファイルで書き出してもジオメトリの情報しか出すことができない状況が多くありました。また、同じファイルを複数人で同時に作業することも容易ではありませんでした。

しかし最新のワークフローの場合、Rhinocerosのデータを取り込むためのテクノロジー『Rhino-inside-Revit』で、Revitで複雑形状を取り込んで表現することが可能になりました。これによって、ジオメトリだけではなく付属情報も共有可能になりました。つまり、ツールの使い分けと統合が可能になったというわけです。

基本的な使い分けとして、Revitではシンプルな形状のジオメトリを使い、Rhinocerosでは複雑な形状を扱ったり、パラメトリックモデリングなどを行います。その後、代用のデータを取り扱いながら統合するという流れです。BIM360を使うことで社内外の関係者とのデータ共有が容易になったこともあり、以前のワークフローと比べると各段に変わってきています。

ここまでは「BIM」を紹介しましたが、ここからは「コンピュテーショナル・デザイン」について、事例を用いて紹介していきます。

上図は『広島スタジアム』の事例なのですが、ここでも「プロジェクト・ライフサイクル」があります。内容としては「基本計画」から「コンセプトデザイン」、「基本設計・実施設計」、「入札」、「施工・生産設計」、「FM」と進んでいきます。「基本設計」の段階だとボリュームスタディを行い、「コンセプトデザイン」の段階では、100〜200個の形状のシミュレーションなどをしています。ステージが進んで「基本設計/実施設計」になると、形状に対して分析を行って最適化したり、環境や構造解析などの各種シミュレーションも行っています。

そして「入札」という段階を経て、「施工・生産設計」に入ります。ここでは建築用のデータを作るために、ネジ1本までデータ化しています。その後も繰り返し検証していくことで、VE(バリューエンジニアリング)や生産プロセスの合理化を行っています。

Rhinoceros+Grasshopperの特長

ここからは、本セミナーのタイトルにも入っているRhinocerosとGrasshopperの話になります。弊社の事例を紹介しながら説明していきます。

これまで複雑な形状の案件をサポートする際にタスクの種類によっては『CATIA』を使うこともありましたが、最近はRhinocerosとGrasshopperをメインで使っています。これは、RhinocerosとGrasshopperはユーザーも多く、操作性も容易ということが理由です。そして、Rhinocerosの特長は大きく分けて3つあります。1つ目は大量のデータ処理が可能な点、2つ目はアルゴリズムによる複雑形状のジオメトリの作成が得意という点、3つ目がパラメトリックモデリングにより大量のデザインシミュレーションができるという点です。

上図の建築物は、弊社で生産設計やデザインの段階からサポートさせていただいたプロジェクトの1例です。

コンセプトデザインの段階では、詳細な収まりまでは特にモデリングしません。しかし、基本的な形状のルールを汲みながら、どういったデザインがいいのかをシミュレーションして形状を探っていきます。

セッション2で紹介される広島スタジアムのプロジェクトも設計施工の案件であり、設計の初期段階から大まかな形状の操作を弊社でもサポートしながら、細かいところを詰めていきました。弊社は生産設計のプロジェクトが多いため「今の段階でこの形状でこのままいくと後で問題になる」という箇所が経験で分かることも多く、常に逆算しながら現段階でやるべき作業をしています。

設計の早い段階からサポートさせてもらうことで、設計の意図を守りながら施工性をクリアしたデザインを実現することができるのですが、基本的に困ってから声がかかる状況が多いです。実際には、どのようなデザインでも初期の設計のまま施工されるというケースはほとんどありません。だからこそ、弊社の場合は複雑な形状でも早期に問題を予知することで、さまざまな条件をクリアしながらなるべく設計通りに進められるようにサポートしています。

活用事例の紹介

次に、事例を紹介していきます。これは、『ところざわサクラタウン』という隈研吾建築都市設計事務所様と鹿島建設様、旭ビルウォール様が携わった案件です。弊社は、旭ビルウォールが担当した外装のエキスパンドメタルのデータ作りを、サポートしました。本案件は生産が間近に迫っていたため、そういった与条件をクリアしながらパネルの割付をしていきました。パネルの歩留まりのいい寸法など全て考え、データでシミュレーションしながら形状に展開していきました。ブラケットの自動配置プログラム組みから自動配置後の検証、問題が起こっている箇所についても設計者や施工会社とすり合わせながら解決していきました。

3Dのデータができた後に行うことは、施工図もしくは製品図の自動生成です。複雑な形状では1つずつ形が違うこともあり、モデリングや情報の書き出しを全て手作業でやっていては時間がかかり過ぎてしまいますし、コストも合いません。そのため、なるべく自動的に生成できるプログラムを作成して作業するようにしてます。

次に紹介する事例は、『富士山世界遺産センター』です。設計は坂茂建築設計様、施工会社は佐藤工業様、そして木(木)の網目状のところを株式会社シェルター様が行った案件です。

すり鉢状でほとんどが曲線のデザインになっていて、2Dの検討が難しいということで私たちにも声がかかりました。さまざまなところを3Dでシミュレーションして、検証しながらモデルを作って収まりを考えていきました。この時は、大半の部分をCATIAで作業しました。

苦労をしたのが、上図の外装の木の部分です。この木データ作りを弊社が担当したのですが、遠目から見ると普通の網模様に見えるところも、上図右側の拡大写真を見るとわかるように意外と複雑な形になっています。

デザインの初期段階ではこのような条件が考慮されないことも多いのですが、実際に加工・施工する際には現実的に考えていく必要があります。もちろん現場で1つずつ加工するわけにはいかないため、私たちがデータ作成を担っています。

上から見ると楕円形で、全体の約7,000ピースの半分である約3,500ピースが全て形状やサイズが異なる状態で構成されています。坂茂事務所からは上から下まで1本でつながったデータしか渡されず、施工・製作の段階では情報が不足していました。その点を、弊社が施工会社・製作会社と話をしながらデータに変換をしていきました。

このケースでは、それぞれ形の違うピースを3mの木の中に収める必要があり、そのために歩留まりなどを考える必要があります。上図の両端に400mmと書いてありますが、これはこの木を使うためには400mm残さなければならないという現実的な条件を表しています。

また、木材加工機械を動かすためには、ジオメトリの情報だけではなく加工箇所や加工順番の情報も付加する必要があります。それが上図にあるBTLというファイル形式です。今回は1つの部材に8ヶ所の切削情報を付加しています。

このBTLのファイルを作るときも、Grasshopperの自動生成アルゴリズムを使って、約2,300個あったスクリプトを最終的に18種類まで集約させました。

本案件では採用されなかったGrasshopperの活用事例を1つ紹介します。使用部材の最適化の検証で、上図下部の「Algorithm1」では、シンプルに部材を配置すると302本の3m材が必要という結果になりました。そこで配置を1度初期化し、最適な組み合わせをGrasshopperで考えると、「Algorithm3」にある通り最終的には約15%減の260本まで減らすことができる結果になりました。

しかし、プログラムを書けば最適化できるとはいえ、現場では部材の搬入タイミングや施工の工程、スケジューリングなどを考える必要があり、そこまで単純ではありません。つまり、単にデータ制作ができればいいというわけではなく、現場のことや加工のことも知らないといけません。私たちはそういった現場の事情・状況も把握しながらデータに落とし込んでいくように常に意識しています。

加工が終わると、次は施工の段階に移ります。実は、本案件ではこの段階で問題が起こりました。右から左に回しながら下から組んでいったのですが、1周回ったところで木がぴったり合いませんでした。下地の石こうボードの施工精度に問題があり、下地のズレが木材の配置に影響してしまったことが原因でした。このときは、スペーサーの厚みを変えるなどして現場で修正することができましたが、非常に多くの時間を費やす結果になってしまいました。

しかし、今であれば、下地が施工された段階で点群データを取ってスペーサーのサイズを自動生成したり、木のピース自体の形状を下地のズレに合わせながら調整することができます。

まとめ

Revitが得意なことには、「四角い建築」や「クラウドによる管理でグループでの共同作業が容易」、「図面やデータ管理がしやすい」などがあります。一方、Rhinoceros+Grasshopperが得意なことには、「複雑形状の操作」や「大量データの取り扱い」、さまざまな形状を一度に生成する「パラメトリックモデリングによるシミュレーション」、「プログラムによるモデル、図面、情報などの自動生成」などが挙げられます。

現代の日本の建設業において、設計だけではなく構造や設備のBIM化も進んできています。

ソフトウェアも日々進化していますが、それでも1つのソフトウェアやプラットフォームで完結できるプロジェクトは今でも存在しません。それぞれ必要な段階で最適なソフトウェアを持ち寄り、個別に対応する必要があります。しかし、異なるソフトウェア間のデータ連携は容易にできるようになってきています。

社会的な状況としては、国交省のBIMの推奨や各自治体でのBIMの活用の機運も高まっているという状況もあり、今後もコンピュテーショナル・デザインやBIMの活用は進んでいくと私たちは考えています。

Q&A

Q1. BIM推進を専業で行う部門の人員・体制と一般社員に対するBIM教育の現状と今後の予定について教えてください。

弊社は基本的に全員がBIMの導入サポートをしているため、一般社員がいる状況とは違います。そうではない場合は、基本的にはBIM専門の担当が必要だと考えています。

教育に関してですが、今ではBIM自体もかなり高度化しています。そして、海外にはBIMマネージャーやデータマネージャーなどの役職があり、教育なども担っています。そうでなければ、設計者が自分の設計業務をしながら教育を行うのは少し現実的ではないと感じています。

Q2. パースを見ながら変更されていく時も多いと思いますが、パースはパースで修正し、BIMはBIMで修正されているのでしょうか?

段階によって作業が異なるため一概には言えません。例えば、生産設計の段階でビジュアルを出す場合は、細かいデータまで必要かどうかにもよって変わってきます。パースとBIMの両方で常に同じデータを作りながら両方でビジュアライズするケースは少ないです。ビジュアライズの目的にもよりますが、「収まりをみんなで見ながらシェアしたい」というときは、BIMのデータをそのままビジュアライズしています。

Q3. BIMでの納品は日本でも始まるでしょうか?始まるとしたら、いつごろ始まるとお考えでしょうか?

現状では、「どういったルールに基づいて納品するか」という決まり事がないため、統一性がありません。そういったルール制定も含めこれから始まっていくでしょうし、私自身もそうなってほしいと期待しています。

Q4. 昨今、学生には建設業界が敬遠されているような風潮を感じています。これから建設業界の希望や明るい未来についてどのように感じますでしょうか。

建設業界は、一般的にテクノロジーの活用は遅れていると言われています。労働生産性も悪いという結果が出ていますが、それは言い換えるとブルーオーシャンとも言えます。現在では建設業界の外から人が入ってきていますし、そこまでマイナスな状況でもないと私は考えています。

過去を見ても、新しいツールが出て人の感性もあわせてアップデートされることで、新しいクリエーションが出てくる機会も増えてきています。これだけ多くのツールが出てきている中で建築を勉強できるのは、とても楽しい時代になってきたと感じています。

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