建築ビジュアライゼーション情報サイトKviz.jpにて、新しく学生さん向けの企画が発足!
題して『学生さん!あなたのポートフォリオ、添削します♪』。
業界のプロを先生にお迎えし、学生の皆さんが作ったポートフォリオ作品を、オンラインで指導・添削します!
本日は、第0回として、建築パースや建築ビジュアライゼーションに関心のある学生さん2人をお招きしました!
スペシャルゲストは建築CGパースを作成するフリーランスの高畑真澄先生。私たちのイベントでも登壇いただき、「世界で一番やさしい3ds Max建築CGパースの教科書」の著者の方が、なんと直接学生さんにメッセージをお届け!
今回は高畑さんからのお話を中心に、学生さんの質問も絡ませる形で、進行していきます!
【高畑 真澄さんのプロフィール】(@t_msum)
建築CG・パース制作会社を2社経験した後、2013年独立。 CGデザイナーとして独自の世界観を表現するとともに、建築CGの分野にとらわれず多岐にわたり活動中。 イメージを最高な形で、ご提案・ご提供することを目指しています。 そこには技術だけではなく心を込めて貢献することが私の理想のカタチです。
参加された学生のプロフィール
一人目の学生さん:横田 芙実子さん
立命館大学大学院 理工学研究科 建築都市デザイン 修士2回生
元々絵を描くのが好きで、そのスキルを活かせると思い建築系の道へ。現在大学院ではVRの研究室に所属。2D・3Dグラフィックと建築学の間のような分野で研究している。またそのうえで、Unreal Engineや建築ビジュアライゼーションを使用した勉強もしている。
二人目の学生さん:高橋 淳さん(@tjmkmp)
東京造形大学メディアデザイン学科卒
在学中はCGや、Photoshopやイラストレーターをつかった広告グラフィック・WEBデザインを勉強。その中でも在学時にはCGに注力し、ゲーム業界や映像業界に興味があった。3ds MaxとPhotoshopで作る「モテパース」という美しいパースを知ったことがきっかけで、美しい一枚目を描ける建築CGに興味を持つ。現在は建築関係の勉強をしつつ作品制作に取り組んでいる。それらの制作したポートフォリオと共に就活中。
建築パースを描く人
”建築パースを描く”と簡単に言っても実際にどういった人がいるのか、ここがやや不透明です。なのでここからは、本題の1つ”パースを描いている人”について解説していきます。
学生の目線に立ってこの業界の仕事をどういう風におこなっていくのか、どういう形でこの業界を目指していくのか。
それを知るためにまずはどういう人たちがこの界隈で働いているのか、それを知ることが大事です。それを可視化した図が以下の通りです。
最近は日本の物件を海外のアーティストが描くこともあります。さらに外注として海外の人に頼むことも増えてきました。
私も現在は個人ですが、最初は設計事務所のCG部で仕事をしていました。学生の2人は画像右にある学校に属していますよね。
仕事受注の関係図(高畑さんのケース)
私は現在図の矢印があるところからお仕事頂いています。海外からの仕事はありませんが、やっている方もいます。アトリエからの注文はパース制作会社などを介すことが主の為、直接的な取引はありません。なので、矢印は省略しました。
最近は企業勤めではなく、私のように個人でやる人も増えてきています。コロナの影響でそういう考えになったという人も多いと思いますね。
よくある疑問として、”お仕事や案件をもらう先はどこか?”というものがあります。一度どこかに勤めて、そこで得たつながりなどがメインというのが一般的です。しかし、最近はSNSなどから依頼をもらう方も増えているでしょう。それも新しい選択肢の一つといえます。
私の場合は独立するために少し戦略的に動いたので、それを軽く話していきますね。
まず率直に”前職の取引先からお仕事をいただくのは気が引ける”、そう考えました。だからこそ退職前に、個人でやっている人やパースを描いてるパース制作会社など”同業者”と繋がることに専念しました。その人たちに独立したことを伝えると、手に余っている仕事、つまり”おこぼれ”をもらうことができたんですね。そこをスタートにして徐々に仕事を獲得していきました。両者win-winで個人的におすすめの作戦です(笑)。
仕事の専門性
私自身も最初は勤めながら情報交換もしつつ、コンペ・パース・広告など色々な絵を描いていました。ひとくちにパース会社といっても様々あります。
パース会社によって専門分野が変わるので、就職した後にそこで学び、”自分の得意なこと”や”好きなこと”に気づいていくことが大事ですね。もし仮に、既に何か特定のジャンルに興味があるならそういった方面で就職活動をするのも一つの手段だと思います。
■コンペや短納期など、スピード感に対応出来る人
■簡単なスケッチだけでモデリングが出来て、絵としてまとめられる人
■細かい詳細図の図面が読めて、正確な形を作れる人
■フォトリアルなパースを追求する人
色々な専門性があります。
横田さんが自分の道を決めたように、きっとどこかのタイミングで好きな分野が見つかることがあると思います。
発注と受注の関係
私自身が同業者さんに直接ヒアリングをして図を作成しました。外注する場合はどこに出すのか、なども含めて詳細にしたものがこちらです。
私自身の例なども反映させてます。手が足りなくなった時には別の個人の方にお願いをしたりという、個人と個人のやりとりもあるという点ですね。
【横田さんからの質問】
私も学生同士で制作を助け合ったりすることがあるのですが、仕事も個人と個人ですることがあるのはちょっと意外でした。
手が足りないときはお互い協力し合っていますね。学生の方にアルバイトで勉強を兼ねてお願いしてやってもらってもいいですけどね。ただ、仕事としていただいていることなので機密事項などの関係で外注で出せない場合もあります。なので、ケースバイケースでやっていますね。
受注の上で2ヵ所を介す場合などもあります。(例:設計事務所→パース制作会社→個人)
パース制作会社が設計事務所とのやりとりで使っている時間分、当然個人に入る分は減ってしまいます。そういった点では、直接設計者と仕事出来るのがベストといえますね。又聞きにならないのでヒアリングも早くできてコミュニケーションも円滑になるのでお互いにプラスです。
つまり、設計事務所の中にあるCG部が一番連結が取れてるということになります。
五角形チャートについて
建築パースを描く人たちの強みやポイントを五角形チャートにまとめました。それぞれを見ていきましょう。
①建築系が強い人
設計と建築を勉強中、そして絵が好き。(例:横田さん)
②CG系が強い人
CGが好きで勉強中、建築にも興味がある。(例:高橋さん)
③美術・デザイン系が強い人
描くことが好き・インテリアが好き。
④PC系が強い人
プログラミングができてパソコンに強い。
⑤マインド!
「やってやろう!」という気持ち。
自分の強みと弱みを知る
これを踏まえて私が言いたいことは建築や絵画、CGをやっていたからといって有利ではない、ということです。上の5つのうち、キッカケはどれでもあり!ということを知って欲しいです。
これを是非、これからの学生に知ってほしいですね。例えば②の「CG系が強い人」で、”建築の勉強をしてないから建築知識が無い”というコンプレックスを感じてる人いるかもしれないですが、そんなことは気にしなくて大丈夫です。
私自身の例をしてみましょう。私は絵とデザインと建築が好きで、それらが私の強みです。しかし、反対にソフト関係とパソコンは、得意ではありません。ソフトに関しては、バージョンアップの通知にあわあわしちゃうくらい苦手です(笑)。
つまり何が言いたいかというと、自分の中の”強い所”と”弱い所”を知って欲しいです。その上で、出来ないことを不安視する必要はありません。
具体的な例をもう一つ出します。建築は勉強してないがモデリングが得意、という別の業界から来た人がいました。図面などを見ながら繰り返しモデリングすることによって、テーブルの高さやドアの高さが感覚的にわかるようになっていき、どんどん上達していきました。
また、ただ”絵が好き”という人は建築やCGの知識が無くても絵心があり、まとめ方が上手いということだってあります。
全てを出来る必要はありません。みんなそれぞれの弱みがあります。なかには、マウスでは上手に描けるのにペンでは無理、という人もいます。
繰り返しですが、”自分ができないことを認識すること”が大事です。その点を勉強して伸ばせばいい、というのがわかります。もしくは、その点を別の人に頼むなどの行動もできます。
私もまだ絵画の勉強をしていますし、CGの勉強は新しいことだらけなので、永遠の課題ですね。
つまり、”プロでも何かしらできないことはある”これを知ってほしいんです。この五角形のチャートのどれかが欠けていても、どこかが長けていれば問題はないということです!
建築パース良し悪しの言語化
建築パースという分野において、「なんとなくしっくりこない。」などではなく、”何が良いか”、”何が悪いか”というのをしっかりと言語化して具体的に指摘することが重要になります。
どういうことなのか、1つ例を出して説明します。
今回、横田さんから数枚の画像が送られてきた際のことです。私は美術の先生では無いので、絵としてのチェックは控えさせていただきました。
しかし、”建築パース”という観点では良し悪しを指摘することができました。
建築パースは、仕事を発注してくれたクライアントありきですよね。例えば、マンションのパースの場合、「マンションを建てる」「マンションを買う」など、いくつかの要望があっての仕事依頼だと思います。
当然その場合は、”マンションを建てたくなるようなデザイン”や、”マンションを買いたくなるような絵”を描く必要があります。
建築パースのお手本とは
wanimationさんのインタビュー記事を拝見した際に、興味深い話を見つけました。それは、建築やパースなどにおいての先生は”自然風景”だということです。
外に行けば自然光やビルの陰の落ち方など、そこに答えがあるんですよね。美術館に行ったりもいいけど、そういった自然を見るというのが一番の勉強だと。
近い経験が私にもあり、強く共感しました。その経験は前にやった仕事で、マンションエントランスのCGパースを担当した際の話です。クライアントに「包丁を研いだように描いてほしい」と言われました。当時のCG部の人は、その言葉のニュアンスにとても苦戦していました。
対応策として、
■マテリアルの反射などに問題があると考え、さらにCGソフトやプラグインを詳しく勉強する
■とにかく実物を観察する
の、2通りの行動があると思います。そこで、クライアントに更にヒアリングしてみると、”実物を見てほしい”とのことでした。その人の表現は包丁でしたが、実際に表現されている状態を直接目で見る、つまり”自然”です。やはり実物を捉えることが、一番確実なんでしょうね。
- プロフェッショナルにアドバイスをもらおう – 添削にあたり、高畑真澄先生から「建築ビジュアライゼーション業界に就職するための入口と知るべきこと」 ←今ここ!
- ポートフォリオ添削 vol.1 – 横田 芙実子さん「A FISH」
- ポートフォリオ添削 vol.2 – 横田 芙実子さん「Tower」
- ポートフォリオ添削 vol.3 – 高橋 淳さん「Kitchen Room」